ジャパンタイムズの報道によると、2021年に日本政府が実施した調査で、300万人以上の独身男女(35歳~44歳)が両親と同居していることが明らかになっています。特に、女性よりも男性の方が同居を選ぶ傾向にあり、独身の男性は35歳になると家を出るように促されることが多いようです。
欧米諸国とは異なり、アジアの大多数の国では、18歳になった子供が自立して、親元を離れることはほぼありません。結婚するまでは、両親と同居する事が当たり前で、場合によっては、結婚した後も両親との同居をのぞまれる事もあります。一方、欧米諸国では、18歳になった子供が自立して、親元を離れることが期待されています。ですが、昨今の経済状況や住宅事情を鑑みると、現実的とは言い難く、今の欧米諸国では経済的に実現が難しいと言われています。
確かに、引っ越しをする理由や事情は人によって異なるので、いつがいいと一概に言う事はできません。ですが、果たして私たちはいつ実家を出るべきなのでしょうか?
引っ越しのベストタイミング
両親と暮らす家を出るかどうかは、
- 文化的な規範や伝統
- 仕事
- 両親との関係性
- 配偶者の有無
- 経済的事情
など、様々な要因に左右されています。
前述したように、欧米では大学生になる18歳を機に、親元を離れて自立するのが当然だと考えられています。しかし、昨今の経済状況やコロナウイルス感染症の感染状況を鑑みて、親元を離れるタイミングを遅らせる、両親が暮らす自宅に戻ってくる子供が増えています。
世界的な調査によると、日本人男女は、親元から離れたい、親元から離れるべきだというプレッシャーを感じることが少なく、18歳から34歳までの日本人男女の48.9%が依然として両親と同居している事が明らかになっています。
ただし、引っ越しは、一人暮らしをしたいからという理由で気軽に始められる事ではありません。なお、親元から離れる理由としては、
- 転勤を命じられた
- 実家から職場までの通勤時間が長すぎる
- 両親との関係が良くない
- 両親と、長期的に献身的な関係を築いている
- 自分のスペース、プライバシーを確保したい、両親から関与されたくない
などが挙げられます。
日本では一般的に、親元を離れる最適なタイミングは、24歳から27歳だと考えられている節があります。ただし、それはあくまでも大学を卒業して、就職先で長期的に働く場合の話で、タイミングは人によって異なります。
両親と同居するメリット
両親との同居にもメリットとデメリットがあります。メリットとしては、
- 家賃を払う必要がない、食料品や光熱費の負担だけで済む
- 自分のニーズや要件を満たすアパートを探す手間が省ける
- 近隣の住環境に馴染みがあり、安心して暮らせる
- 生活支援などのサポートが整っている
- 仲間ができる
- 将来に備えて、貯金ができる
- 家事、家のメンテナンスなど、役割を分担できる
などのメリットが挙げられます。一方、デメリットとしては、
- 部屋が狭いので、プライバシーやスペースが確保しづらい、親から関与されやすい
- 両親が他人を招くことに好意的でない場合は、友達や恋人を自宅に招きづらい
- 両親との口論や緊張(両親がいまだに子ども扱いする、互いの生活習慣や予定、ルーティーンで衝突するなど)
- 人生における重要な教訓を学び、自立心と自主性の感覚を育む機会が得られにくい
などが挙げられます。
一人暮らしのメリット
親元を離れて、一人暮らしを考えているのであれば、まずは一人暮らしのメリットとデメリットを比べて、検討してみましょう。
メリット:
- プライバシーやスペースを確保できる
- 成長する多くの機会が得られる(ライフスキル、問題解決能力が得られる、自信や自立心が得られるなど)
- 清潔の基準を自分で決められる
- 訪問者を招く頻度を自分で決められる
- ニーズや趣味に合わせて、家具の装飾や配置を自分で決められる
- 家族と同じ空間にいないため、口論や緊張が減り、家族との関係が良くなる
デメリット:
- 初めて一人暮らしをする場合は特に、孤独、不安、退屈に悩まされる
- 家事、メンテナンスの負担
- 家賃、請求書、修繕費の支払いなど、経済的負担
- 家族と遠く離れて暮らす場合は、サポートが得られにくい
初めての一人暮らし
一人暮らしをすると決めた後、不安に駆られて、日々神経をすり減らす事になるかもしれません。ですが、起こりうる事態をすべて想定し、準備や計画を怠らなければ、ストレスを最小限に抑えることができます。
一人暮らしを始めるには、生活に必要な予算と収支を管理しなければなりません。親元で暮らしていた時よりも、家賃、請求書、メンテナンスにかかる費用、食費など、生活にかかる費用はすべて自分で負担するので、出費は増えます。また、一人暮らしをしていると、経済的に余裕があると思われることが多いため、収入で生活を賄えるようにしておきましょう。そして、生活必需品や食料品を購入するときは、地元のスーパーマーケットの特売に目を光らせ、日本全国にある100円ショップを活用したり、生活必需品はまとめ買いをするなど、工夫して出費を抑える事を心がけましょう。また、一人暮らしをしていると、スペースを有効に活用する事ができます。例えば、生活必需品やお気に入りの商品を買いだめして、そこに保管する事ができますよ。
ライフスタイルや予定に合わせて、習慣やルーティーンを組むと、快適で安全な暮らしが手に入ります。そもそも、人間は習慣の生き物です。習慣やルーティーンを確立する事で、心身を健康に保つことができます。
一人で生きるということは、自分を孤立させたり、頼れるのは自分しかいないという意味ではありません。そうではなく、必要なときに助けを求め、家族や友達とのつながりを保ち、育み、発展させることが大切です。
一人暮らしを始めた後、最初の数週間は近隣を散策して、近所の人々に自分の事を知ってもらいましょう。住環境に慣れ親しみ、地元の人々と交流を深める事が、緊急時のセーフティーネットの構築につながります。
一人暮らしにかかる出費
一人暮らしをする事になった時に、最も気になるのが費用です。家賃から請求書、食費に至るまで、生活にかかる費用はすべて自分で払うため、まずは現在の給与と引っ越し先のエリアの生活費の平均を比べてみることが大切です。
Statistaによると、2022年における男女の平均月収は、学歴によって異なることが明らかになっています。
短大卒の男性の平均月収は34万8,000円、女性の平均月収は26万9,000円です
また、大卒の男性の月収は約39万2,000円、女性の月収は約29万4,000円となっています。
そして、大学院卒の男性の月収は約47万8,000円、女性の月収40万4,000円となっています。
ワンルーム(20㎡~40㎡)における家賃(光熱費別)は、5万円~7万円が相場です。もちろん、東京の都心部で暮らす場合は、家賃はさらに上がります。驚くことに、最低家賃は10万円からです。実家を出たいけど、予算が少し厳しいという方には、家賃は2万円から、初期費用が安い賃貸物件に特化したビレッジハウスがお勧めです。
電力、水道、ガスなどの光熱費は、季節や使用量によって異なります。ちなみに、光熱費の月額料金の相場は約12,000円と推定されています。(電気代約6,500円、ガス代約3,000円、水道代約2,500円)。
現在の日本では、携帯電話料金は予算に応じてプランや契約を選べるものの、利用料金は高くなる傾向にあります。ちなみに、月額プランの利用料金の相場は2,500 円から 7,500 円程度です。
家庭用インターネットの場合、利用するサービスにもよりますが、利用料金は約4,500円からになります。
最後に、通勤用定期は1か月6,600 円から購入できます。幸いなことに、勤務先の企業が費用を補助してくれます。ただし、自宅で仕事をすれば、交通費の支給はなくなります。
日本で一人暮らしをする場合は、毎月約298,096 円の生活費が必要になると推定されています。もちろん、これはあくまでも推測であり、支出の総額は、家賃、月々の請求額、ライフスタイルによって異なります。