住まいが古くなると取り壊す慣習のある国の人は、古くなった住まいの改修が人気を集めていると聞けば、びっくりすると思います。日本の団地のリノベーションは、古い建物が素晴らしい住まいとなって甦る事を証明するいい例となっています。
「団地」には、貧しい人が住む古い建物というイメージが強いかもしれません。ですが、最近の改修プロジェクトでは、団地のイメージを変える取り組みが行われています。無印良品などトレンディなブランドが、ミニマリズムという概念や人気のインテリアデザインを団地に持ち込んだおかげで、団地=今風というかつてのイメージを取り戻しつつあります。昔は人気があったのに今では古くていいイメージがない団地が、どんな風に変わるか知りたくありませんか?団地のリノベーションについて、詳しく紹介していきたいと思います。
団地とは?
団地は、集合住宅が何棟も集まって形成されています。政府が供給した公営住宅がほとんどですが、企業が従業員のための住まいとして、独自に建設した事例もあります。1950年代~1970年代に、日本に初めて団地が登場しました。当時の団地は、今風でお洒落な近代の象徴でした。近くには公共交通機関やお店があり、田舎よりも東京や大阪などの大都市に多く作られました。
当時は、「マンション」(コンドミニアム、高級マンション)を借りたりローンを組むよりも、安く借りる事ができましたが、今日の団地では、住民の高齢化が急速に進み、あまりいいイメージはありません。ほとんどの団地が1年前に建設されたばかりだというのに、古くて、生活の利便性への配慮が十分でない印象を持たれています。昔は、団地=新しく革新的な住まいの象徴でしたが、今では団地=貧困層や老人が住む古い住宅というイメージになってしまっています。
お洒落な団地づくり
かつて団地を担当していた不動産業者の中には、現代のライフスタイルに取り組むブランドと提携して、古い団地のリノベーションを行う業者がいます。無印良品などのブランドが発信しているお洒落な概念をリノベーションに反映させる事で、団地のイメージの向上に取り組んでいます。無印良品と共同で手掛けた団地は、洗練されていて、開放的で、ミニマリスト志向が反映されているそうですよ。
人気のあるのは、無印良品が手掛けている団地だけではありません。横浜で実施された団地リノベーションプロジェクトには、古い住まいをリノベーションし、地域社会の活性化を目指すという目的がありました。洋光台の団地をリノベーションする際に、団地前の空き地を利用して、CCラボ(コミュニティチャレンジラボ)を設置しました。エクササイズ教室、カフェ、美術品の展示など、様々な目的で利用できるそうですよ。CCラボで開催されているハロウィンのイベントはとても人気があるそうで、毎年3000人以上が参加しています。
他にも、AIDAHOというスタイリッシュな建築設計事務所が、たまプラーザ団地のリノベーションを手掛けました。AIDAHOは、団地リノベーションプロジェクトへの参画を通して、古くなった住まいにも大きな可能性がある事を私達に教えてくれました。ビレッジハウスも、古い団地をリノベーションしています。内装と外観にこだわって、リノベーションしました。より魅力的に見せるために、特に外壁には今風の色を塗装しています。
団地リノベーション
普通、団地をリノベーションする時は、業者やブランドと話し合い、できるだけ既存の設備は残して行います。しかし、無印良品は、元の柱だけを残し壁や不要な個所は取り壊して、小さな部屋に区切られていた部屋を広々としたワンルームにしました。そして、棚やランプを設置し、内装を今風にして、床には畳とは異なる床材を起用しました。確かに畳があれば、エクササイズや寝たり座ったりする時に便利ですが、モダンなインテリアとは不釣り合いで、あまり人気がありません。そこで無印良品は、畳に似たリネン製の床材を開発しました。肌ざわりが良く、ミニマリストの嗜好にぴったりの床材なんですよ。
リノベーション済みの団地は、元々合理的で交通の便がいい場所にあります。古い団地は、もともと断熱性が低く、冬は部屋が中々暖まりません。そこでリノベーションをする際には、浴室のヒーターや床材を断熱性の高い物に入れ替えました。そして監視機能付きのインターフォンを設置し、落下や転倒を防止するため、照明や色彩設計を見直しました。古いドアノブをレバーハンドルに入れ替えて、浴室やトイレには手摺も設置します。こうする事で、障害のある人や高齢者でも住みやすくなりました。ビレッジハウスでは、同じリノベーション済みの建物内でも、利便性が異なる部屋を用意しています。住民の多様なライフスタイルに応じて、様々なオプションをご用意しています。
便利でモダン、お手頃な家賃で住める
団地のリノベーションに伴い、最近は便利で今風な建物にお手頃な家賃で再び暮らせるようになりました。昔から団地の近くには、公共交通機関やお店があります。ですので、都会で生活するのであれば、団地はとても使い勝手がいい物件です。もともと、団地はコミュニティの活性化に一役買い、住民同士のつながりや生活の楽しみを提供してきました。確かに、団地のリノベーションには費用が掛かりますが、新築の「マンション」に住むよりもはるかにお手頃な価格で住めます。日本では、古くなった建物は取り壊し、新たに建て直す事が一般的でしたが、団地リノベーションは、多少の工夫と改善を施す事で、古くなった住まいにも大きな可能性を見出せる事を我々に教えてくれています。